バレンタイン当日、早朝に登校してクラスのイケメン達の下駄箱、引出しに入っているチョコをすべて盗んだのがバレた時の帰りの会での謝罪会見カンペ

えー、本日はみんなの貴重な時間を頂戴して、このような会をもうけてもらったことをありがた迷惑とさせていただきます。

みんなもご存じの通り、バレンタインという日は、女の子にとって好きな人への想いを告げるのに最適な日であります。普段から胸に隠していた気持ちをこのピンクな雰囲気に背中をおしてもらい、勇気をふりしぼる一大イベントであります。

しかし、そんな素敵な前評判のバレンタイン当日である今、痛ましい事件が発覚しました。

なんと、女の子が一生懸命想いを込めて作ったチョコレートが何者かによって、全て盗まれたのです。

絶対に許せません。そんな不届き者は! 自分がバレンタインという負け戦に挑むのがそんなに怖かったのか? おい、犯人! お前のしたことは、今までクラスが培ってきた絆を崩壊させる蛮行だ! とっとと、お縄につきやがれ!

すみません。少々、気が荒ぶってしまいましたが、話を本題に戻したいと思います。

 

結論から言えば、犯人は僕です。 それは、みんなも分かっていることでしょう。

しかし、おかしいと思いませんか? こんなにも犯人への怒りをにじませているこの僕が犯人などありえるのでしょうか? 

だけれど、犯人は僕なのです。 

僕は普段から女子トイレ、女子更衣室などの女子と名のつく部屋には常習犯で忍び込んでいきました。 女子焼却炉などがあれば、僕は迷わず飛び込み、この身を焼かれることを本望とします。

そんな行いから、僕のバレンタインがメイウェザー戦の那須川天心より、負け戦なのは承知していました。

踏みにじりたい。 僕を辱める女子の純粋な恋心を踏みにじり、ともにイケメン達に僕のこのみじめな思いを一時でも味あわせたい。そんな歪んだ思想が産み出した行為が先の事件の顛末です。

だが、事は僕の思い通りにはならなかった。 

なくなったチョコを男女で探し、仲良くなっていくみんな。 

吊り橋効果なのか、こんな性犯罪者の僕にも協力をあおぐ女子。

僕は、みんなの団結力に感動した。 そして、瞬間でもクラスの一員になれて嬉しかった。

僕は犯人でありながら、捜索を続ける間に犯人を憎む二面性を持ち合わせた。

僕は苦しかった。 だから、こうして打ち明ける。

 

僕が犯人だ。 しかし、僕は犯人が憎い。 

そこで僕は、思いついた。

結果的に、この事件でみんなの仲も深まったし、僕も仲間になれたわけだから、これはこれでいいじゃんと。

これが僕からのチョコレートでいいじゃん。

どことなく、義理で仲良くしてた偽りのクラスの絆を本命に変えるきっかけを与えてくれた。

そんなビターでスイートな経験をさせてあげた僕が謝る義理はないと思います。